2019年9月のニューヨークで行われた国連・気候サミットでは、スウェーデンからヨットでやって来た16才の不登校児がトランプ大統領なみの世界的な名声を得ることになった。
そのトランプでさえ彼女の勢いに押されたのか、わずか10分で国連の会場から立ち去ることになったのだ。
日本ではグレタさんの愛称でお馴染みになったグレタ・トゥーンベリ。
彼女はその後も毎日のように世界のメディアに報じられることとなった。
その一挙手一投足がメディアに取り上げられるさまはヨーコと結婚して平和活動を始めたばかりのジョン・レノンを思わせるほどである。
グレタさんの次なる目的地はスペインのマドリードだった。
COP25(第25回国連気候変動枠組み条約締約国会議)に参加するためだった。
衝撃の世界デビューから2ヶ月たち彼女はどんなメッセージを世界に発したのか。
新米環境大臣・小泉進次郎の動向や日本の環境対策も交えて書きたい。
飛行機嫌いのグレタさんは変わった子!?
グレタさんがアメリカ大陸からヨーロッパに上陸したのはつい数日前のことだった。
上陸という表現は比ゆではない。
本当に海から上陸したのだ。
NYの国連会場に行ったときと同様、彼女はまたしてもヨットで大西洋を横断した。
アメリカ東部からポルトガルのリスボンへ向かう約20日間の大航海だった。
だからこそグレタさんの再びの登場はまさにヨーロッパ上陸といえる。
ご存知の通り、飛行機に乗らないのはジェットエンジンの化石燃料でCO2を増やしたくないからだ。
こういう行動には世界中から批判も集まっている。
飛行機は文明のシンボルであり、それへの否定は人類文明・引いては人類の存在そのものへの否定にもつながるのではないか。
日本でもホリエモンこと堀江貴文が、最近この点からグレタさんを「変わった子だ」と言ってネット上で話題になった。
暴かれた「グリーン・ニューディール」の嘘
環境活動家に対し人類自体を攻撃しているというバッシングが集まるのは今に始まったことではない。
そういう声を受け、現在の環境活動は「グリーン・ニューディール」に大きくシフトチェンジした。
経済的な発展を続けながら、技術革新によって環境問題を克服するという立場である。
グレタさんの登場は第一にこのグリーン・ニューディールの嘘を暴き出すものだったといえる。
実際、主要先進国はグリーン・ニューディールの名の下にずっと環境破壊を続けてきた。
日本のエコカーブームもその1つだ。
減税のメリットと共に省エネ・CO2低排出の車への切り替えを促す官民一体の試みは一見、環境政策の一環に見える。
だが、その一方で政府は長く愛用している車に重税をかけるようになった。
そのせいでその必要がない人も新車に買い換えざるを得ないようになったのだ。
つまりこれはエコカー政策の名の下の大々的な「新車購入キャンペーン」である。
古い車でも乗る回数を抑えてエコ運転を心がければ新車なみに燃費やCO2を抑えることはできる。
古い車が多いことよりも新車を大々的に造ることの方が環境に負荷をかけるのは明らかなことだ。
グレタさんが飛行機を使わないという極端な主義を取っているのは、このようなグリーン・ニューディールの悪しき実体を浮き彫りにしたかったからではないだろうか。
実際彼女はNYの国連サミットで永遠の経済成長を「おとぎ話だ」といって非難している。
もし彼女が環境活動をする一方で技術革新はすばらしいといって飛行機でさっさと移動すれば、ここまで大きなブームにはならなかっただろう。
投票なくして環境活動のゴールはなし
グレタさんの上陸劇は一種のパフォーマンス・アートともいえるだろう。
この21世紀にヨットでの大西洋大航海は、やはり強烈なインパクトを与える。
実際、グレタさんがリスボンに上陸したとき集まった大勢の人たちはハリウッド映画のスーパーヒーローがやってきたように彼女を熱狂的に出迎えたのだ。
飛行機嫌いでヨットを使うのは、彼女の主義であると共に効果的なコマーシャル術ともいえるだろう。
後日これまた陸路でマドリードに向かったグレタさんは、さっそく15,000人もの人と共にデモ行進をした。
注目すべきは当地のカルチャーセンターで行われたスピーチだ。
そこで彼女は「私たちの勢いがいくら増してもそれが政治に反映されるワケではない」といった趣旨のことを語った。
これは若者に投票行動を促す言葉ではないだろうか。
いくら個々の環境意識が高まってもその国の政府がひどければあらゆる努力は台無しになる。
日本でも投票率さえ上がれば、国民の方が政治を動かせるようになるのだ。
黒子に回ったグレタさんの美学
12月9日、COP25でのグレタさんの態度には世界中がビックリさせられただろう。
彼女はほぼ何も語らなかったのだ。
彼女はアメリカや太平洋諸島などの先住民のスピーチを後押しする立場を取った。
彼らは地球温暖化の害を今世界の最前線で受けている被害者である。
しかも彼らの地域のCO2排出量はなきに等しいものだ。
つまり彼らの土地は、主要先進国の贅沢な暮らしの代償を支払わされているようなものだ。
グレタさんは、そういった声無き人々にスポットライトを当てるために自身の名声を使ったといえる。
この姿勢にも、ジョン・レノンの平和活動が重なる。
彼はパパラッチを利用して平和の啓発活動をしていた。
グレタさんが「エゴの塊だ」と非難していた人々もこの沈黙には驚かされただろう。
思えば、彼女は最初から自分の声よりも科学者の意見を聞いてほしいと訴えていた。
COP25で各地域に住む先住民たちの黒子に回ったのも何も驚くことではない。
セクシーにはやれない小泉環境相の苦悩
COP25には日本からも環境大臣・小泉進次郎が参加した。
石炭の火力発電所の増築計画のある日本は今世界中の非難を浴びている。
実際、会期中にあった世界の環境団体主催の「化石賞」では日本は豪州・ブラジルに次ぐ3位として銅メダルを獲得している。
これにはノーベル賞の授賞式に出席中の吉野さんも「みっともない」と言った。
小泉環境相は11日の会見で「世界の非難から逃げない」と豪語しながらも石炭政策からの転換は口にしなかった。
おそらく彼は個人的にはグレタさんと同じ立場だと思える。
が、ポストに留まるために日本政府の尻拭い役をしているのだ。
その環境相就任は彼をライバル視する安倍首相のイジメ人事だったのではないかとも思いたくなる。
おまけに小泉進次郎の地元・横須賀市でも火力発電所の新設計画が着々と進んでいる。
彼は9月の気候サミットで「環境政策はセクシーにやるべきだ」と言った。
確かに彼が家に帰れば日仏ハーフのセクシー美女が出迎えてくれるだろう。
だが仕事場に戻れば、彼はセクシーとは程遠いおじさんたちが回す絶望的な歯車の中でもがき苦しんでいるのである。
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