2019年ニューヨークで催された国連気候サミットは、小泉進次郎が初入閣後に初めて取り組む大仕事として日本で大いに注目された。
環境大臣になった38歳のイケメン議員は人気キャスター・滝川クリステルとの結婚報道で騒がれたばかりだった。
しかし実際、小泉大臣は環境問題を棚上げする自民党の尻拭いをするだけだった。
その上「ステーキ大好き」発言で環境大臣にあるまじき無知ぶりまで披露した。
日本人の多くがそれにあきれ果てた頃、スウェーデンの怒れる少女が登場した。
16才の環境活動家・グレタ・トゥーンベリが気候サミットで世界中を揺るがすような名スピーチを披露したのだ。
日本でも数日のうちに「グレタさん」の愛称で知られるようになった。
グレタさんが気候サミットに登場する数日前、世界では400万人もの若者たちが気候危機を訴えてデモ行進をした。
多くの日本人はこの突然現れた10代のカリスマに驚いたことだろう。
グレタさんの素性はただの不登校中の1女子高生に過ぎない。
そんな子がいかにして世界中の若者を動かすほどの影響力を持つようになったのだろうか。
またアスペルガー症候群もわずらうグレタさんの人間性に問題はないのだろうか。
今回はそういうことを掘り下げたい。
栄光への第一歩を飾った名家少女のインスタ写真
グレタ・トゥーンベリが初めて世間の注目を浴びたのは2018年の夏。
彼女はそれからわずか1年ほどで国連の気候サミットに招待され、世界的な知名度を得た。
地球温暖化をインチキだというトランプ大統領は気候サミットへの不参加を明言していた。
だが、現場に突然顔を出してメディアを驚かせた。
それもグレタさんの影響力ゆえのことだろう。
1年前まではスウェーデンの1女子高生だった子がどうやってトランプまで動かせるようになったのだろうか。
まずグレタさんは2018年の夏、環境問題に専念するために「気候のための学校ストライキ」を1人で始め不登校児になった。
名前通り正義の名の下で、ぐれたのである。
最初の第一歩はスウェーデン議会の前での1人ストライキだった。
いくらSNSの時代でもそれだけでは一気に広まるはずはない。
当時の彼女を写した何枚ものインスタやツイッター画像を見れば、その理由の1つが分かる。
イエローのジャケットを羽織った彼女の写真はそのまま映画のポスターにでもなりそうな出来だった。
私は実際その一枚を拡大して部屋のインテリアにしている。
撮ったのはフリーのカメラマンだという。
たまたまそこにいたのか、あるいは広報戦略だったのか。
さらにグレタさんは芸能一家の出身だった。
母はオペラ歌手で父は俳優、祖父もまた俳優・監督である。
最初のSNSの拡散は、この2点による所が大きいだろう。
国連スピーチにも表れたグレタさんの文章力
しかしグレタさんの名声の核心には、その文章力・スピーチ能力がある。
2018年5月、スウェーデンの新聞社によるエッセイコンテストで、彼女は若干15才で優勝している。
その能力の高さは先日の国連スピーチにもはっきりと出ている。
私たちはあなたがた(大人)を監視している。私たちは大量絶滅期の始まりにあるのに、あなたがたが話すのはお金と永遠の経済成長というおとぎ話ばかり。
このたった1文で、ずばり今の世界の真実と先進国の愚かさを暴き出している。
地球環境がなければ人類の発展などはおとぎ話(Fairly Tale)に過ぎない。
環境問題こそがリアルな最優先事項だと気づかせる名文である。
『How dare You:よくもそんなことができる』と題されたこのスピーチは、若者と大人たちの分断と未来への警鐘を核にしている。
が、最後には
「あなたがたの好き嫌いに関わらず、世界は目覚めている」
と希望を残している。
この訴えには老若男女すべてに響く力がある。
若者にアクションを促す力があると共に大人世代への反省をも促すのだ。
環境問題への取り組みに失敗し、かつそれにふたをし続けているというのは今世界中の大人たちが共有する暗黙の罪悪感である。
グレタさんはそこに怒りのメスを入れたのだ。
多くの大人たちは彼女のスピーチで目を覚ますことになっただろう。
アスペルガー症候群のグレタさんはスピーチ上手ではなく英語力も優れてはいない。
そしてアイドル的な容姿でもない。
しかしその文章力と圧倒的な熱意によって、世界を動かすアクティビストになったのである。
グレタさんの見る白か黒しかないアスペルガーの世界
グレタさんの登場は環境問題と共に精神障害の問題にも光を当てることになった。
アスペルガー症候群の彼女は、それが障害ではなくスーパーパワーだとして誇りに思っている。
「私の世界には白か黒かしかない」
というその言葉にアスペルガーの本質が見える。
普通の人はそれが黒だと思っても、表立っては白と黒の中間色・グレーでごまかす。
そこには白だと思う人への配慮が働いている。
空気を読むというのもそういうことだ。
しかしアスペルガー症候群の人は大抵、黒と思えば黒だと断言する。
環境問題へのグレタさんの態度も同様だ。
討論相手が大物政治家でも、悪い政策にはノーを突きつける。
忖度が一切ない。
また彼女は環境問題を自分の人生の問題に直接結びつけている。
彼女は幼少期に環境問題について知って落ち込み、11歳になるとその不安から日常生活も送れなくなった。
普通の人はいくら環境問題が深刻でも、飽くまでそれは社会問題だとしてグレーに捉えている。
しかしグレタさんは自らの将来の危機だとして黒と捉えているのだ。
若者世代の総アスペルガー化で大きく前進した環境問題
このようなアスペルガーの症状は、現在の環境問題にとって極めて有効だ。
この気候危機はもはやグレーな段階ではなく、まさに崖っぷちの状態なのだ。
アスペルガーの少女・グレタさんはそこにはっきりと黒をつきつけた。
世界中の若者もそれに続いた。
環境問題において、今の若い世代はアスペルガー症候群になっているといえるだろう。
だからこそ、グレタさんはそれを障害ではなくスーパーパワーだと捉えているのだ。
スピルバーグ監督などもアスペルガー症候群として知られるが、グレタさんの活躍もまた世界中のさまざまな障害者を勇気づけるものになっただろう。
グレタさんが世界の注目を集めるにつれて批判も沸きあがってきた。
強欲な親や左翼団体が彼女を使って大もうけしているなどとも言われた。
彼女自身は「またおなじみの陰謀論だ」と軽くかわしている。
トランプ大統領もそうだが世の保守派は、正しいものが出てくると必ず陰謀論をぶつけてくる。
それはウソに満ちた自らの影を相手に投げているだけのことに過ぎない。
グレタさんが最も訴えているのは彼女自身の主張ではなく、世界中の科学者の声を聞けということだ。
環境問題が危機的であることは、すでにありあまるほどのエビデンスによって裏づけられている。
保守派は建設的な対話を拒み、フェイクニュースや捏造データで環境問題を未だにグレーゾーンに落としこもうとしている。
だが、グレタさんの登場で世界はようやくそれを黒に塗りつぶし始めた。
彼女が国連でスピーチしたよう、すでに世界は目覚めているのである。
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