画像引用:日刊建設工業新聞
「建設関係の仕事につきたいんだけど、元請け企業にでも入らない限り将来性がないんだよなぁ」
こんなふうにボヤいている建設業界志望の若者は少なからずいるだろう。
また特に現役の大工や工夫は、いくら仕事を続けても給与が上がっていかないことに腹を立てているかもしれない。
あるいはすでに辞めて行き場を失くしている人もいるだろう。
そんな建設業の担い手たちに希望の光になりうるものが「建設キャリアアップシステム」である。
実際、それは人手不足が最も深刻な建設業界を立て直す起爆剤になるのか。
ここではそのメリット・デメリットを上げて深く掘り下げたい。
合わせてICカードの登録・申請方法や国交省などが主催する説明会などについても触れたい。
建築業界の深刻な人手不足の背景にあるものとは
台風や地震など災害が起こるたびに、家や施設というものがいかに大切なものかということが切実に感じられる。
建物・建築物とは人間の生活拠点であり、誰も家がなければ生きてゆけない。
建築技術がもたらす公共インフラは、大げさではなく人類文明の結晶体ともいえる。
建物は個人・社会両方にとって水や空気のように最も欠かせないものの1つである。
現場で直接、建築を担っている大工や工夫もまたそれだけ大きな使命を背負っている。
しかし、彼らの社会的な地位はそれに見合っていない。
本来であれば医師や弁護士のように敬われるべき立場にあるが、一般的に低く見られている。
結局、世の中は習得にお金がかかる職業ほど優遇されるようにできている。
大工のように労力やリスクがハンパなくかかる仕事でも、その点で差別され軽視されるのだ。
建築はある程度自分の裁量でできる物作りである上に社会的な意義も大きいので、やりがいは非常に大きいものだ。
しかし大工や工夫は社会的地位が低い上に、最近では給与も一般会社員レベルに落ちている。
ほぼデスクワークのみの公務員の方が遥かに高給取りだ。
さらに元請け企業に属する工員でも出世や昇給には壁がある。
彼らは多種多様なクライアントや元請けの下で働く自由業だ。
そのためベテランでも建築現場ごとにほぼ新人のような立場で入ることになる。
つまり仕事が終わるたびにキャリアがリセットされるようなものだ。
これでは将来性も生まれない。
今、建築業界が深刻な人手不足に陥っているのは決して少子高齢化だけの話ではない。
そこには昔から根強くある業界の構造的な問題があるのだ。
建設キャリアアップシステムとは? 登録方法とセミナーの参加方法
そんな状況に風穴を開けようとするのが、国交省や関連団体が勧める「建設キャリアアップシステム」だ。
シンプルにいえば、仕事や現場が変わってもちゃんと実績が積まれて評価されますよということ。
もちろんそれには出世や昇給も伴ってくる。
例えばそれはロールプレイングゲームのプレイヤーになるようなものだ。
戦えば戦った分だけ経験値とお金が獲得でき、どんどんレベルアップしてゆく。
それはどんなに離れた土地に行ってもちゃんと引き継がれてゆく。
さらに高いレベルになれば強敵と戦えるので、より経験値やお金を稼ぐことができる。
「建設キャリアアップシステム」も名目上はそれと同じだ。
その登録は難しいことではない。
個人でも手軽に出来るし、企業に属していれば事業主が代行することもありだ。
登録後にICカードが発行される。
それが大工や工夫にも身分証になる。
若者向けに「建レコ」というスマホアプリまで用意されている。
費用も安い。
ネット登録なら2,500円であり、運転免許の更新料よりも安い。
年間利用料も400円とETCカードの未使用時のそれよりも安い。
事業主の登録でも資本金500万円以下の下請け企業の場合、年間たった3,000円だ。
主に事業主が参加する「建設キャリアアップシステム」の説明会は現在、日本全国で行われている。
こちらホームページのURL(https://www.ccus.jp/)から、『全国地方都市セミナー・申し込みサイト』のボタンをクリックすれば確認できる。
ページ下段にスクロールすると申し込みホームがある。
個人情報の入力は本名とメルアドだけだ。
現在、東京・大阪などの都市部ではほぼ満席状態だが、地方にはかなり空きがあるので興味のある方は急いだ方がいい。
1企業につき参加者は3名まで。
国交省の官僚がセミナー講師なので得るものは多いだろう。
建設キャリアアップシステムのデメリットと大いなる希望
「建設キャリアアップシステム」にも、もちろん不安材料や問題点も多々ある。
まず、キャリアのステップアップにおいて何が判断基準になるのかということだ。
国交省の説明では資格・経験・現場歴とあるのが気になる。
これが優先順位ならば多くの人にとって魅力的には映らないだろう。
というのも、いい資格やいい経験値といったものは大学を出たり元請け企業に入ったりした人の方が得られやすいものだからだ。
金銭的な事情でそれらが叶わなかった人でも、現場歴によって逆転できるような仕組みが欲しい。
この3つが等しいものであれば、このシステムはより多くの作業員に愛されるだろう。
またこのシステムを企業が導入するために必要なコストがどう支払われるのか不透明な点もある。
小規模の下請け企業の場合、自己負担になればきつくなるだろう。
今、中小の小売店は消費増税に伴うカードシステム導入の必要性に直面して悲鳴を上げている。
それと同じようになってはいけない。
また、40代から70代までのベテラン建築作業員の実績をないがしろにしてはいけない。
システムの出発点から彼らには何らかの大きな優遇措置が必要だ。
新人作業員と一緒にキャリアアップをスタートするのであれば、ベテランたちの不満は爆発することになるだろう。
反面、もちろんメリットもある。
事業主は作業員や建築家のICカード情報ですぐにその人の実力を知ることができる。
煩雑な事務手続きが省かれるのだ。
また、雇われた側の個人もICカードがあれば仕事の幅が広がる。
その個人情報は建築業界全体のハードウェアに蓄積されるので、頑張っていれば色んな人の目に止まる。
ゼネコンからヘッドハンティングされることだって夢ではないのだ。
何よりカードがあることは大工や工夫たちの社会的地位の向上とやる気にも繋がる。
国交省はカードの種類を現在4段階にすると発表している。
もっと増やせば大きなモチベーションになるだろう。
そのランクと報酬の高さが世の中に浸透すれば、現場作業員でも一級建築士のように尊敬されるようになるのかもしれない。
「建設キャリアアップシステム」はまだ未知数だが、その可能性は決して小さいものではない。
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