「これ以上、人が集まらなきゃ会社をつぶすしかない」
あらゆる業種でこういった経営者たちの悲鳴が上がる昨今、人材確保はほとんどの会社や起業家にとって最優先事項になっているはずだ。
何もしないでいられるのはブランド力がある大企業くらい。
会社員や起業家の中には、山ほど仕事がきても全然人手が足りないといった皮肉な事態に悩まされている人も数多くいる。
しかし、どんなに小さな会社でも人集めの発想を根本から見直せば劇的に改善できるチャンスがあるのだ。
それは従来の企業理念などの説明型アピールから、相手の心に寄り添った提案型アピールに変えることから始まる。
特にお金儲けだけでなく心からその仕事がしたいという人に仲間になってもらいたいという人。
そういう方には、ぜひこの私の会社紹介のためのヒントを1つのささやかな参考にしてほしい。
そして読んだあとには、すぐに企業プレゼン資料や面接方法などに反映してもらいたい。
つまり善は急げということだ。
そこに急いではいけない理由がないのなら、大抵の場合その遅れは遅れた分だけ損をもたらすものになるだろう。
まず相手から望みを引き出し、会社業務に適合させること
人を集めることは何も会社や起業家だけがやっていることではない。
映画や小説などの物語、またWEB上のセールストークでも、人集めは至上命題である。
そこでここではそれらのアピール術を生かした人材確保術を提案したい。
第一に寄り添うというマインドセットが必要だ。
映画監督でも「今多くの人たちはどんな物語を観たいのだろう」と考えるのは非常に大切なことだ。
それは流行に便乗するためではない。
それを知れば自分のやりたい表現に幅をもたせることができるからだ。
会社の人集めもそれとよく似ている。
個人面接や合同説明会などで先に企業理念や業務内容をアピールするよりも、相手が何を求めているのかを知ることが大切なのだ。
優れた営業マンなら、ほとんどの顧客は「自分が何を求めているのかもよく知らない」ということをよく知っている。
それを聞き出すにはやはりうまい対話術がいる。
こういう質問を続ければ、相手の仕事に対する考え方が自然と見えてくるものだ。
相手にしてみても自発的に自分の望みが明らかになってくるので気持ちが良い。
そこでその望みと合致する会社の業務内容を出す。
またもっと良い方法は逆に相手の意見を業務に反映させることだ。
それは先に書いた映画監督が人の観たい映画を知ることで自らの表現に磨きをかけるのと同じだ。
などと面接官が言えば、多くの人はその会社に好印象を抱くだろう。
ぶっちゃけウソでもいいので、相手の意見をメモしたりと新人尊重の体をアピールすれば会社の魅力は何倍もアップするはずだ。
会社プレゼンのための文章構成術
今の若い人たちはスマホ世代であり、それ以前の日本人の脳の仕組みとはかなり違っている。
ネットでどんな情報も即座に入手できる彼らは、とにかく最速でそのポイントを知りたがる。
会社のアピール文書の基本構成を考える上でも、ここが一番のポイントになる。
人材集めもまた会社の売り込み・セールスであり、物やサービスを売り込むWEB上のセールストーク・文章術がそのまま生かせる。
セールストークにはPASONAの法則というのがある。
主に導入文・つかみに応用できるものだ。
P:問題提起
A:親近感
S:解決策
O:提案
N:絞り込み
A:行動
それぞれの英語の頭文字にはさまざまな解釈があるが、私はこれが一番だと思っている。
Pは問題提起でもあり、ポイントでもある。
それはもちろん会社の理念や業務ではない。
それらはプレゼン資料の最後に簡潔にまとめるのがベストだろう。
その人が仕事探しにおいて何を悩んでいるのか、何を大切にしているのか、まずこの点に寄り添うと一気に心をつかめる。
大抵の人は論理より感情で動くのでA:親近感のある文体も大切だ。
次に早速SとO、解決策と提案事例を出す。
スマホ世代はとにかくすぐに答えを知りたがるのだ。
次のN:絞込みが一番の難所だろう。
募集人材に絞込みをかけてよりピンポイントに訴えるのが基本だ。
しかし、ここは逆に大げさにアピールするところでもある。
例えば現在放送中のシャンプー・PANTENEのCMでは黒柳徹子が自分の頭を指差して「さぁこの髪でいこう」と言う。
それはあのタマネギ頭なのでインパクトが強い。
そこで見た人の多くはあれほどユニークな髪にでも効くのかと思い、PANTENEのすごさを無意識的に実感させられる。
つまりこのNは一種のはったりでもあり、インパクトを残すところでもある。
カフェの募集であれば
「世界に1つだけのコーヒーを作ろう」
などと大げさに出てもいい。
その上でA:アクションを促す文句を繰り出そう。
PASONAの法則には基礎的な文章力も必要なので、習得には時間もかかるだろう。
ちなみに私もこの導入文でそれを応用したので、1つのささやかな参考例として読み返してもらいたい。
会社が個々の社員にもたらすベネフィット・実益を提示する
最終的に人を動かすためにはベネフィットを提示する必要がある。
これも営業スキルの基本だがそのためにはメリットとベネフィットをちゃんと分別しておかねばならない。
商品におけるメリットはその機能性、ベネフィットはそれを顧客が使うことで得られる実益のことだ。
会社であれば例えば手厚い福利厚生がメリットになる。
が、それだけでは面接相手の心は動かないので、どういうものが欲しいのか尋ねるといい。
そこで相手の若い男性は30歳までには結婚したいと言う。
それに対し会社側が、男性社員にも1年の育児休暇があり、かつ給与も業務も復帰前と同じ条件になると返す。
おそらくそこでその男の気持ちは大いにその会社に傾くことだろう。
また分かりやすい例として最近ノーベル化学賞を獲った吉野彰さんが在職する旭化成で話を進めよう。
旭化成の説明会に漠然とした気持ちでやって来たリケジョの女子大生がいるとする。
そこで面接官が、吉野さんの開発したリチウムイオン電池のメリットについて説明する。
が、それだけではやはり気持ちは動かない。
そこで世の中にどんな発明があればいいのか問う。
すると彼女は最近豪雨被害で実家が浸水したので、少しでも減災に役立つような仕事がしたいと返す。
そこで面接官はリチウムイオン電池が将来、電気自動車の主要電源になることを話す。
車からCO2が出なければ地球の温室効果が薄まり、気温も下がって台風の大型化が止まる。
おそらくこのベネフィットの提示で浸水被害に遭ったリケジョの心は大きく動くだろう。
私のような悲しい被害にあう人が少しでも減らせることができる。
そんな熱い感情が働けばますます旭化成志望のアクションにつながるのである。
魅力的な会社しか生き残れない新時代
私の会社紹介のためのヒントは以上になる。
今、社会全体で人手不足が起こっている最たる原因は少子高齢化ではないと私は見ている。
それは人の会社を見る目が年々厳しくなってきているからではないだろうか。
しかしそれは裏を返せば中小企業や起業初心者にも人集めのチャンスがあるということだ。
魅力ある仕事を作り出しそれを魅力的にプレゼンすれば、無数の眠れる非ワーカー層に届くということであり。
そのためにはまずその人が会社に何をもたらすのかということより、会社がその人に何をしてあげられるのかを考えることが必要になる。
今からの時代、そういう会社が新たな勝ち組になってゆくことだろう。
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