日本ではまだギグエコノミーという言葉は一般に浸透してはいないだろう。
ギグエコノミーとは簡単に言えば新しい働き方のこと。
日本人に最も身近な例でいえば民泊やウーバーイーツになるだろう。
しかしこれはただの新しい職種に収まるものではない。
エコノミーと名がつくだけに、それまでの経済活動とは一線を画すパラダイムシフト級の変換をもたらすものなのだ。
日本では未開拓だが、世界の目で見れば2025年までには40兆円に迫るギグエコノミー市場が生まれるともいわれている。
人類を辛い労働から解放するともいわれるこの新たな働き方について少し考えてゆこう。
仕事をみんなでシェアすれば、こんなに便利な世の中に
ギグエコノミーが一般に浸透したきっかけは、アメリカ発祥のUber(ウーバー)が作ったといえるだろう。
ウーバーは2010年代前半からライドシェアやウーバーイーツを始め、この二大事業で大成功を収めた。
ライドシェアというのは一般人が行う車の送迎サービスのこと。
ウーバーに正式登録できれば誰もがドライバー認定を受けられ、サービスを提供できる。
例えば私用で車を運転している最中にも誰かを送迎することができる。
外出先でスマホを通じて近くにいるウーバーユーザーから受注を受け、タイミングがあえばその人を拾って送り届けるのだ。
なので仕事中の空き時間でもいいだろう。
日本でも話題になったので知っているという人は多いだろう。
日本でいえば代行運転に近いが、ライドシェアは出社義務や勤務時間に縛られることがない。
まさに日常の中で気軽に仕事ができるのだ。
ウーバーイーツにしても基本は同じ。
外出先でお腹がすいたとき、ウーバーに登録した店舗が近くにあれば出前を頼むことができる。
出前はその店の従業員以外でもできる。
ウーバーに配達登録した人が近くにいれば、店がその人に頼んでメニューを運ばせることだって可能。
ライドシェアと同じで、顧客の最たる利点はどこにいても比較的速くサービスを受けられることだろう。
例えば、人っ子一人いない海辺で釣りをしていても運がよければ送迎者や出前を頼める。
スマホで自分のGPS情報を知らせれば道を教える手間も省ける。
しかもそんな贅沢なことなのに格安料金で受けられるのだ。
これはシェア・エコノミーとも呼べる。
スマホ技術を生かし社会全体で仕事をシェアすれば、ここまで便利な世の中になるのだ。
クラウド・ソーシングにもつながるギグ
ギグ・エコノミーのギグとはミュージシャンがする突発的で一回限りのライブ公演から来ている。
ビートルズがレコード会社の屋上で急遽やったライブも「ルーフ・トップ・ギグ(屋上のギグ)」と呼ばれている。
ウーバーに代表されるようほとんどの仕事は突発的で一回限りのものだ。
勤務時間は24時間365日であり、どのお客さんとも一回限りの雇用関係だ。
そのためギグ・エコノミーはネット上で一般人が請け負う仕事・クラウドソーシングにも当てはまる。
日本でもクラウドワークスやランサーズなどがすでに100万人を超える会員を集めている。
ノマドワーカーという言葉をご存知の方もいるだろう。
スタバやフリー●WiFiの公園などでノートPCを開いて長居している人たちのほとんどがノマドだろう。
彼らはクラウドワークスなどを通じて個人や企業から仕事を受注した人たちだ。
アメリカではオンデマンド・ワーカーと呼ばれており、ある調査では2020年までにはアメリカ国内で1000万人の雇用が生まれると推計している。
アメリカでもWonoloというクラウドソーシングのプラットフォームがあり、ウーバーもすでにシカゴでウーバーワークスを稼動させている。
PC1つで仕事ができるソフト関係のエンジニア、WEBライター、クリエイターなどがその主な職種である。
賃金が低くても高くても避けられない混乱
もちろんギグ・エコノミーもいいことばかりではない。
一番問題視されているのが賃金の低さだ。
日本のクラウドワークスを見ても1,000文字のWEBライティングに報酬300円のような単発仕事が日々あふれている。
たかが1,000文字でもちゃんとテーマに沿った文章を書こうとすればリサーチを入れて2時間はかかる。
とすれば時給が何と150円になる。
これはいつどこででも出来る低コストのワークスタイルだということを加味しても安すぎる。
まさに子どものお使いレベルの報酬である。
アメリカではウーバーの加入者が労働組合を作るなど新たな動きが出てきている。
が、逆に賃金が高くなっても大きな問題がでてくる可能性がある。
お金があるところには必ず悪人が寄ってくるからだ。
ギグ・エコノミーは人間の性善説に則っており、相手が信頼できる人だということが大前提になっている。
ウーバーイーツでも配達人が悪人であればメニューを転売するだろう。
預かった食事を別の人に高値で売って、それよりも安く手にいれたものを顧客に渡すということだ。
まずこういうダフ屋行為が侵入してくるはずである。
日本人にあったワーク・アズ・ライフ
ギグ・エコノミーは市場規模の急激な拡大によって他にもさまざまな問題を抱え込むことになるだろう。
しかしそれでも人類を不満だらけの労働から解放する可能性も大いに秘めている。
その多くの仕事ではワーカーの自由がかなりの程度で許されているからだ。
自主性が認められれば自然と想像力や思考力が働き、その結果やりがいのある仕事ができる。
仕事の辛さの最たる要因は労働者をルールでがんじがらめにするその不寛容さからきているのだ。
またジョブではなくワーカー中心の市場でもある。
ジョブ・仕事が向こうからどんどんやってくる世界なので、通常の経済活動のように自ら仕事探しに出なくても良い。
ハローワークに行く時の辛さは多くの人が経験していることだろう。
そして何よりも生活や人生の中に仕事を組み込める利点がある。
発明家で著述家の落合陽一はよくワーク・アズ・ライフといっているが、それもそういう意味だ。
彼は著書『日本再興』の中で大昔の日本人は生活と仕事に境界を引いてなく、民族としてもワーク・アズ・ライフに適していると指摘している。
ギグ・エコノミーは2020年ごろから本格的に目立ち始めるだろう。
それは既存の経済市場や人類の人生観などを変えてしまうのか。
いつか年月がその答えを教えてくれるだろう。
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