台風被害で大規模停電が起こった千葉県で悪質な詐欺が横行している。
家をなくした被災者に追い討ちをかけるようなその実体が連日ニュースで報じられている。
なぜ詐欺グループはよりによって被災地で卑劣な犯行に及ぶのか。
また詐欺にあわないために必要な心構えや対策はどういうものなのか。
そして犯人たちはただの社会のクズとして叩かれるべき絶対悪なのか。
今回はそういったことを考えてゆきたい。
詐欺グループによる千葉県・被災地詐欺の手口
千葉県の被災地詐欺は主に、家の施工業者か義援金の集金人のフリをするものだ。
被災地では台風の後も弱り目にたたり目の事態になった。
豪雨の予報が出たため、台風で屋根が痛んだ家では早急にブルーシートで応急処置をせねばならなくなった。
詐欺グループはそこに目をつけた。
市から派遣された施工業者のフリをし屋根にシートを張っただけで十数万円を要求するという手口に出たのだ。
無料サービスを装って、作業後にへ理屈をつけて追加徴収するという手口もあったという。
また市の職員を装い、被害のなかった家に義援金を取りにゆくグループもあったそうだ。
詐欺グループがこのように被災地で卑劣な犯行に及ぶことは2011年の東北大震災のときにも見られたことだ。
だが被災からここまで早く事件が起こることはなかった。
社会に免疫ができたことで過激化する特殊詐欺
高齢者をターゲットにする詐欺グループは今、窮地に立たされている。
「オレオレ詐欺」に代表される特殊詐欺事件の被害件数は2019年に入って激減しているのだ。
2019年の上半期においては去年同期の被害総額よりも2割減、146億円もの減少になっている。
これは特殊詐欺が10年近く長期化する中で、啓発活動が日本社会全体に根づいたことの何よりの表れだろう。
少々認知症が入ったお年寄りでも、自分の身の守り方を身に着けているようになったのだ。
それによって詐欺グループはなりふり構わず、手段を選ばなくなった。
巧妙な電話でその家に多額の現金があることを知った上で強盗に入る「アポ電」がその最たる例だろう。
また特殊なデバイスを経由して家に駐車した車のロックを外し、そのまま盗んでゆく大胆な窃盗犯も出てきた。
台風が起こった被災地に数日のうちに駆けつけ、悪質な詐欺行為を働くのもその一環だといえる。
詐欺の被害から身を守るには身元確認と事前の値段交渉
そういった強引かつ巧妙な詐欺から身を守るには何が一番大切になってくるのだろう。
一番にいえるのは家などにやって来る市職員や省庁職員などに対し、身元確認を徹底することだ。
身分証の提示はもちろん、その部署に電話をかけて本人確認することも必須だ。
民間業者の場合は、何よりも事前に値段交渉を明確にしておくべきだ。
値段を明示しない人、また無料だという人ほど怪しい人はいない。
外国の観光旅行でもそれは鉄則だ。
写真を撮ってあげる、荷物を持ってあげるなどと近づいてくる人は要注意人物である。
何となく頼むと、大抵は終わったあとに高額なチップを請求されるのだ。
旅行先では他人に何かを頼むときは事前の金銭交渉が必須だ。
今回の千葉のブルーシートの詐欺にしても、最初に書面でこれ以上の金額を要求しないという確約を取っていれば防げたものだ。
あとで業者がそれを破っても大丈夫。
日本は法治国家なので適切な書面があれば確実に法律が被害者を守ってくれる。
この世には極悪人がいるという心構え
詐欺から身を守るには心構え・マインドセットを変えることも必要だ。
特に日本人の多くは、この世に悪人は数多くいても極悪人はいないという固定観念を持っている。
そういう人たちが特殊詐欺に引っかかりやすい。
特殊詐欺のほとんどは極悪人の手口だからだ。
被災者が詐欺にかかりやすくなるのも、
「まさか被災者に手を差し伸べた人が裏切るなんてことはないだろう」
と思い込んでいるからだ。
しかし実際にそういう極悪人は日本にも数多くいるのだ。
2013年アメリカでボストンマラソンの最中に爆弾テロが起こり約300人もの負傷者が出たことがあった。
そのドキュメンタリー番組で1人の警官が興味深いことを言った。
彼は付近の監視カメラに、爆弾入りのリュックをゴミ箱に入れた男が映っていたのを見てこういうことを口にした。
「テロリストって本当にいるんだと思って恐ろしくなった」
誰もがテロリストの存在は知っているが、それを目の当たりにするとこの警官のように恐怖を覚えるだろう。
この世にはどんな悪事もなせる極悪人がいる。
そういう心構え・マインドセットが詐欺を防ぐ何よりもの武器になる。
貧困という理不尽さが生み出す極悪人
TVのワイドショーでは被災地での詐欺グループに対し、クズ呼ばわりする有名人がいた。確かに彼らは人間のクズである。
だが、世の中の大勢がそんな挑発的な態度を取れば、そのクズたちはますます過激化するだろう。
そして彼らの多くは何も好き好んで被災者を食い物にしているワケではない。
以前、タイで大勢の日本人詐欺グループの男たちが現地当局に逮捕された事件があった。
彼らは足がつかないよう外国で電話詐欺を行っていたのだ。
そして犯人の素性を見ると、そのほとんどが暴力団の債務奴隷になっている者たちだった。
被災地の詐欺グループにしても同様だろう。
誰もが生きてゆくために、殺されないためにギリギリの状態なのだ。
では暴力団や反社会勢力が悪いのだろうか。
だが彼らのほとんどは貧困家庭出身である。
貧困というのは理不尽の源だ。
ただ、その家に生まれただけなのにさまざまな差別や苦難がふりかかってくる。
それが貧困家庭出身者の実情だ。
彼らは自ら受けたその理不尽さを社会に返すことでリベンジしようとする。
それが極悪人の犯罪心理である。
この世に貧困がある限り、極悪人も卑劣な犯罪もなくならない。
政治がよくなれば貧困は終わるが、政治は延々と変わらない。
だからこそ、この世には極悪人がいるという哀しいマインドセットが個々に必要になってくる。
だが同時に極悪人はいても絶対悪はいないという考えも大切だ。
悪人はもれなく劣悪な環境によって作られるものだからだ。
卑劣な被災地詐欺は、犯人探しよりも社会の改善に結び付けねばならない。
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