「表現することは好きなんだけど、どうもその受け皿がないんだよなぁ」
そんなふうにボヤく人は年々どんどん増えているはずである。
WEBを通じて自己発信するのが当たり前になった今、クリエイターとしての承認欲求を持つのはもはや日常的なことになってきた。
写真・イラスト・動画・ポップソングなどなど。
そういった自己表現でちょっとした人気者になってみたいと思う人は数多くいるだろう。
そういう人の中には既存のリアルな文化に不満を持っている人も少なからずいるだろう。
何か賞に送っても返事すらもらえない。
マスコミがもてはやす作品もいいとは思えない。
ネット上の文化的なプラットフォーム・環境基盤とは第一にそんな人たちの居場所探しのスペースであるに違いない。
その1つに「note」がある。
最近急速に人気を集めるようになった文化コンテンツの投稿売買サイトであり、2019年の現在の利用者数は1200万人だという。
noteは不満多き新進クリエイターたちにとって救いの場となるものなのか。
今回はそこを掘り下げてみたい。
noteの手数料「2割ルール」が阻むクリエイターの自立
noteは株式会社ピースオブケイク<Piece Of Cake,inc>が2014年から運営する個人向けの文化プラットフォームだ。
noteが大人気になった最たる要因はイージーな課金システムにあるだろう。
イメージ・テキスト・サウンドに限られるが自分が発信したものをお手軽に自由な価格で有料化できるのだ。
ユーザー同士のコミュニケーション機能が充実しているので売れなくてもクリエイターとしての満足は得られるだろう。
他の多くのプラットフォーム同様、アカウントを作るのも簡単で登録料も無料。
ただし作品コンテンツが売れたときに少なからず搾取の手が伸びる。
何やかんやでほぼ2割以上が抜き取られるのだ。
割高感を出さないために1000円以上の報酬から受け取れる仕組みになっている。
この辺はクラウドソーシングの「クラウド・ワークス」と似ている。
クラウド・ワークスはネット労働者たちのプラットフォームであり報酬の2割が持っていかれる。
プラットフォームの利用料には「2割ルール」があるのだろうか。
ユーザーのほとんどにとってこれは大きい。
10万円稼いでも2万円が消える。
源泉徴収があればさらに1万円が消える。
noteは「だれもが創作をはじめ、続けられるようにする」というミッションを掲げている。
であれば利用料の減額は必須だ。
費用内訳の透明化も欠かせない。
文化プラットフォームの利用者の大半は一般庶民に違いない。
彼らが質の高い創作を続けるには少なくとも生活に追われていない環境が必要なのだ。
noteはクリエイターの理想郷?まだ活躍の中枢になっていない文化プラットフォームの理由
ピースオブケイクCEOの加藤貞顕氏は、インタビューでこのようなことを語っている。
リンク:https://blogos.com/article/410641/
おもしろいものを書くだけで、結果的にデビューできる、つぎにつながる、ということであれば、クリエイターがnoteで本気のコンテンツを出してくれるようになります。
これはあらゆる文化プラットフォームの究極のゴールといえるだろう。
もしこのような場ができれば、無数のクリエイターが殺到する最強のメディアになるだろうし、世界の文化体系が大きくシフトチェンジするはずだ。
しかし現実にはこの理想郷はかなり遠い。
noteは多くの人気コンテンツを世に送り出している。
しかしその多くは成功者の副業に過ぎない。
経済や文化の場でリアルに勝ち抜いてきた人たちが、noteという場を新たな成功のステップとして利用しているだけなのだ。
彼らのメインの活躍の場は実社会にある。
本物の文化プラットフォームは、それ自体が中核になって世の中を動かすようなクリエイターを生み出せる場だといえる。
だが今の所、そんなプラットフォームは世界中に1つもない。
YouTubeでさえその条件を満たしていないのだ。
AIに任せられるであろう適格な作品選別
ネット上に本物の文化プラットフォームができあがるためには、打破すべき3つの大きな壁がある。
1つ目は個人にかかる創造と流通のコストが最小限に押さえられる事。
2つ目は無数のコンテンツの中から質の高い作品だけが適格に選別され評価されること。
3つ目はプラットフォーム自体にリアルな文化なみの重い価値づけがなされていること。
1つ目はクリアされているが、2つ目と3つ目は未だクリアされていない。
そのせいでピースオブケイクCEOの加藤氏が言う「おもしろいものを書くだけでデビューできる」状況にはなっていないのだ。
無名のクリエイターがその才能と努力だけで成り上がってゆくプラットフォームは未だどこにもないのである。
しかし2つ目の「適格な選別」は10年以内にはクリアされるだろう。
noteには現在毎日1万件以上のコンテンツが上がっており、その質を1つ1つチェックするのは不可能だ。
コンテストを開いても然り。
しかしAIが進化すれば道は開ける。
AIは創造物への読解力や理解力を最も苦手とするが、少なくとも作品の良し悪しを判断する能力は獲得できるだろう。
AIが漫画や小説を書くのはおそらく無理だろうが、第一次選考の良き審査員にはなれるのである。
それが実現できればプラットフォームの上位をラノベ小説だけが占めるような現状を変えられるだろう。
プラットフォームだけでクリエイター・デビューするまでの長き道のり
3つ目の「プラットフォームへの重い価値づけ」が最も高い壁だろう。
今日本ではネット上における最大の情報プラットフォームは「Yahooニュース」だ。
それは間違いなくNHKのニュース9や朝日新聞の記事よりも遥かに数多くの人の目に止まっている。
しかし大きな影響力を持つことはできない。
なぜならプラットフォーム自体が軽いからだ。
この点はYouTubeでさえ克服していない。
今世の中には数多くの人気ユーチューバーがいて、彼らはすっかり世界中で市民権を獲得している。
日本でもユーチューバーの中には一流の俳優やアーティストよりも遥かに大きな知名度を持つ人もいる。
しかし彼らは尊敬の対象には上がらない。
それもYouTubeが軽いからである。
noteにしてもそのプラットフォームに重みが加わらなければ、サイト内から大ヒット作は出せてもアート作品としては認められない。
これは世の現行プラットフォーム全体が抱える課題に違いない。
この壁を打破すれば、その創造物はクリエイターを自立させられるだけのお金を生むだろう。
インターネットは生まれてからまだ20数年しか経っていない。
それに対してリアルな文化体系は近代以降300年ほど、マスコミは100年以上の歴史を持っている。
真に新しいクリエイターたちが真に重い存在として世の中を変えるにはかなりの時間がかかるだろう。
それまでは自由なクリエイターほど慎ましくあるべきだろう。
つまりは自己満足と少数の承認だけの世界にとどまるしかない。
noteのような影響力の大きいプラットフォームで無料サーヴィスし、少しでも多くの人に作品が届くようにすればいい。
今、noteができることはそこまでだろう。
それ以上の望みを持つのであれば、まずはリアルな世界で血を流さなければならないのである。
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